【労働法-1】 総論

労働者・雇用主を取り巻く環境

 労働者・雇用主に関する諸問題を扱う法令を、一般に「労働法」と呼びます。しかし、日本に「労働法」という名の法律があるわけではありません。「労働法」とは、労働に関する諸問題を規律する多数の法律とその下にある関連法規(政令・省令・各種ガイドライン・指針等)からなる法令群の総称であり、実際には非常に複雑なものとなっています。

 このような法制の下、労働法を正しく理解することが難しいと感じるのは無理からぬところがあります。実際のところ、労働相談は常に一定数存在しますが(特にコロナ以降は相談数が増加傾向にあると思われます。)、無効な解雇や残業代の未払など、明らかな法令違反に起因する紛争も少なからず存在するのが実情です。

 このような状況に鑑み、本ブログでは、これから順次、日本での労働問題について、ごく基本的なルールや規律について説明していきたいと思います。もっとも、本ブログ上で労働法の全分野を解説することは困難なため、本ブログでは、特にみなさんの関心が高い又は私自身も近時頻繁に相談を受けることの多い、以下の5点に絞って説明することにします。

  • 労働契約の締結(労働条件明示義務を中心に)
  • 労働契約の終了をめぐる紛争
  • 労働時間の規制(残業代を中止に)
  • 労働条件の不利益変更(給与の問題を中心に)
  • ハラスメント(セクハラ、パラハラを中心に)

一般的情報

 上記のとおり、「労働法」にかかわる法令は多数ありますが、知っておくべき基本的な法律があることは事実です。そのうち、特に重要なのは、以下の法令です。

 これらの法令をすべて逐一説明することはできませんが、その基本的内容を理解するために便利なものがあります。それは厚労省等が発行する「知って役立つ労働法」と「労働条件ハンドブック」です(後者は外国人向けに書かれたものですが、簡潔にまとめられたよい資料です)。重要かつ基本的な事柄はこのハンドブックにまとまっていますので、まずはこちらをご覧になり、「労働法」が何を規律しているのかのイメージを得て頂ければと思います。

 なお、外国人労働者の方又は外国人を雇用する雇用主は、English版のブログもあわせてご参照ください。